「フーリエ変換って何のために使うの? どんな時に使うの?」と思っている初学者の方は多いと思います。フーリエ変換は、時間領域の関数を周波数領域の関数に変換するために用いられます。…といっても、いったい何のことを言っているのかよくわからないと思います。 フーリエ変換について学ぶには、まず、「波」について知る必要があります。音波や電磁波が「波」の性質を持っていることは皆さんもご存じかと思います。数学では、波は三角関数で表現することができます。三角関数で表されるということは、その式から振幅や周波数を調べることができるのです。例えば、 $y = $ スペクトルとは、任意の信号の強度をそれに含まれる周波数成分毎に分解した強度分布を言います。 フーリエ級数展開のイメージを以下に表してみました。 一番上の波形は、その下に描かれている、もとの波形の周期に等しいサイン波(基本波)と、その整数倍の波数を持ったサイン波(高調波)との重ね合わせに分解できるんです。 関数は、フーリエ級数展開をすることで、周期の異なるサイン波の足し合わせ(重ね合わせ)として表現できます。複雑な関数が、単純な正弦波の足し合わせで表現できる、というところがフーリエ解析の素晴らしいところなんです。 色々と混ざってるもののなかの、単純な成分の配分が調べられるわけです。 フーリエ解析は応用解析学の一つです。数学や物理学や工学の分野で、フーリエ解析が役立つ場面は数えきれないほどたくさんあります。 特に工学では、音響工学、光学、電気電子工学を学ぶ上で必須です。 音響工学、光学、電気電子工学では、非常によく使わるといいましたね。 電気とか音とか光みたいに振動するものは、波形で表されます。波形で表されると、それはフーリエ解析できる可能性があるわけです。 電気や音のノイズ成分が分かると、それをを除去できるかもしれません。X線を物質に充てて透過した波形を見れば、物質の組成が分かるかもしれません。 フーリエ解析とかフーリエ級数展開とかフーリエ変換とか、いろいろな言葉が出てきましたが、それらをまとめたものをフーリエ解析だと思ってください。
 フーリエ級数について解説します。最初に皆さんに伝えておきたいのは、数式を見てすぐに諦めないでほしいということです。フーリエ解析の分野で出てくる式は、積分計算やΣ計算や三角関数や複素関数など、これまでに学んだ数学の要素がふんだんに盛り込まれていて一見とても複雑そうに見えます。 けれども、式は簡単に展開できることが多く、決して難しいものではありません。このサイトでは、途中計算は省かず、解法も詳しく書いていますので、ゆっくり理解しながら読み進めていってください。 (この章の内容を動画で学びたい方は、以下のYoutube動画も見てみてください)
$-\pi \lt x \leqq \pi$ で定義された区分的に滑らかな周期関数 $f(x)$ は、以下のようにフーリエ級数展開できます。 \[f(x) = \dfrac{a_{0}}{2}+\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty} (a_{k}\cos kx + b_{k}\sin kx)\] また、フーリエ係数 というものも定義できます。フーリエ係数 $a_{k}$、$b_{k}$ は以下のようになります。 \[\begin{eqnarray}\left\{\begin{array}{l} a_{k} = \dfrac{1}{\pi} \displaystyle \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cdot \cos kx dx \quad (k=0,1,2,\cdots)\\ b_{k} = \dfrac{1}{\pi} \displaystyle \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cdot \sin kx dx \quad (k=1,2,3,\cdots) \end{array}\right.\end{eqnarray}\] まずは、フーリエ級数展開に慣れようということで、下の問題を一緒に解いてみましょう。 次式のように定義された周期関数 $f(x)(周期2π)$ を、フーリエ級数展開せよ。 \[f(x) = \begin{eqnarray}\left\{\begin{array}{l} -\dfrac{\pi}{4} (-\pi \lt x \leqq 0)\\ \dfrac{\pi}{4} (0 \lt x \leqq \pi) \end{array}\right.\end{eqnarray}\] フーリエ級数展開 上の図を見てみると、$f(x)$ が区分的に滑らかであることが分かりますね。なので、フーリエ級数展開の式にあてはめられます。まずはフーリエ係数 $a_{k}, b_{k}$ から求めていきましょう。$a_{k} (k = 0, 1, 2, \cdots)$ は $k=0$ の場合を考慮しなければなりません。 $k=0$ のとき $a_{0} = \dfrac{1}{\pi} \displaystyle \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cdot \cos 0x dx $ 積分の中身が、$f(x) \cdot \cos 0x = f(x) \cdot 1 = 奇関数 \cdot 1$ なので、奇関数を $-\pi$ から $\pi$ まで積分することになります。つまり、$a_{0} = 0$ となります。 $k=1, 2, 3, \cdots$ のとき $a_{k} = \dfrac{1}{\pi} \displaystyle \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cdot \cos kx dx $ 積分の中身が、$f(x) \cdot \cos kx = 奇関数 \cdot 偶関数 = 奇関数$ なので、奇関数を $-\pi$ から $\pi$ まで積分することになります。つまり、$k=1, 2, 3, \cdots$ のとき、$a_{k} = 0$ となります。 $a_{0} = 0$、$a_{k} = 0 (k = 1, 2, 3, \cdots)$ であることが分かったので、$a_{k} = 0 (k = 0, 1, 2, \cdots)$ となることが分かりました。 次に、$b_{k} (k = 1, 2, 3 \cdots)$ について考えましょう。$a_{k}$ と違って、$k=0$ の場合がありません。 $b_{k} = \dfrac{1}{\pi} \displaystyle \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cdot \sin kx dx $ 積分の中身が、$f(x) \cdot \sin kx = 奇関数 \cdot 奇関数 = 偶関数$ なので、偶関数を $-\pi$ から $\pi$ まで積分することになります。つまり、
$b_{k} = \dfrac{2}{\pi} \displaystyle \int_{0}^{\pi} f(x) \cdot \sin kx dx = \dfrac{2}{\pi} \cdot \displaystyle \int_{0}^{\pi} \dfrac {\pi}{4} \cdot \sin kx dx$
$\dfrac{1}{2} [-\dfrac{1}{k} \cos kx ]_0^\pi = -\dfrac{1}{2k}(\cos k\pi - \cos 0) = \dfrac{1 - (-1)^k}{2k}$
途中式の $\cos k\pi$ で困ったかもしれませんが、これは $(-1)^k$ になります。kの値を変化させて考えてみてください。 これで、フーリエ係数 $a_{0} = 0、 a_{k} = 0、 b_{k} = \dfrac{1 - (-1)^k}{2k} $ が求まったので、これらをフーリエ級数展開の公式に当てはめましょう。
$f(x) = \dfrac{0}{2} + \displaystyle \sum_{k=1}^{\infty} (0 \cos kx + \dfrac{1 - (-1)^k}{2k} \sin kx) = \displaystyle \sum_{k=1}^{\infty} \dfrac{1 - (-1)^k}{2k} \sin kx$
これで答えが出たのですが、せっかくなのでΣ計算を開いた無限級数の形にしてみましょう。
$f(x) = \sin x + \dfrac{\sin3x}{3} + \dfrac{\sin5x}{5} +\dfrac{\sin7x}{7} + \dfrac{\sin9x}{9} + \cdots$
さあ、これでフーリエ級数展開できました!! さて、フーリエ級数展開したら、どんな図形になるのか確認したいですよね。 $k$ の値を少しずつ増やしながら波形の変化を見ていきましょう。 $k = 1,  \sin x$ フーリエ級数展開 $k = 2,  \sin x + \dfrac{\sin3x}{3}$ フーリエ級数展開 $k = 3,  \sin x + \dfrac{\sin3x}{3}+ \dfrac{\sin5x}{5}$ フーリエ級数展開 $k = 4,  \sin x + \dfrac{\sin3x}{3}+ \dfrac{\sin5x}{5} +\dfrac{\sin7x}{7}$ フーリエ級数展開 $k = 10, 100, 1000$ フーリエ級数展開 いかがでしたか? 最初はただのサイン波だったのですが、だんだんピークが波打って行って、 $k=1000$ ではほとんど矩形波になっていますよね。最初に与えられた $f(x)$ のグラフとそっくりになっているのが分かると思います。ちなみに、このグラフを自分で描いてみたい方は gnuplot のページを参考にしてみてください。 フーリエ解析について、さらに詳しく学びたい方には、以下の本がおすすめです(楽天のサイトにとびます)。
    
 ここまでは、区間 [$-\pi \lt x \leqq \pi$] で定義された周期関数 $f(x)$ を考えていましたが、これを区間 [$-L \lt x \leqq L$] に変更してみましょう。 $-L \lt x \leqq L$ で定義された区分的に滑らかな周期関数 $f(x)$ は、以下のようにフーリエ級数展開できます。 \[f(x) = \dfrac{a_{0}}{2}+\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty} (a_{k}\cos \dfrac{k\pi}{L}x + b_{k}\sin \dfrac{k\pi}{L}x)\] また、フーリエ係数は以下のように定義できます。 \[\begin{eqnarray}\left\{\begin{array}{l} a_{k} = \dfrac{1}{L} \displaystyle \int_{-L}^{L} f(x) \cdot \cos \dfrac{k\pi}{L}x dx \quad (k=0,1,2,\cdots)\\ b_{k} = \dfrac{1}{L} \displaystyle \int_{-L}^{L} f(x) \cdot \sin \dfrac{k\pi}{L}x dx \quad (k=1,2,3,\cdots) \end{array}\right.\end{eqnarray}\] では、$-L \lt x \leqq L$ で定義された周期関数 $f(x)$ のフーリエ級数展開も慣れろ!ってことで、下の問題を一緒に解いてみましょう。 次式のように定義された周期関数 $f(x)(周期2L)$ を、フーリエ級数展開せよ。 \[f(x) = \begin{eqnarray}\left\{\begin{array}{l} 0 (-2 \lt x \lt 0)\\ 1 (0 \lt x \lt 2) \end{array}\right.\end{eqnarray}\] フーリエ級数展開 上の図を見てみると、$f(x)$ が区分的に滑らかであることが分かるので、フーリエ級数展開の式にあてはめられます。まずはフーリエ係数 $a_{k}, b_{k}$ から求めていきましょう。 $a_{k} (k = 0, 1, 2, \cdots)$ を考えましょう。 $a_{k}$ は $k=0$ の場合を考えなければならないこと、忘れていませんよね? $k=0$ のとき $a_{0} = \dfrac{1}{2} \displaystyle \int_{-2}^{2} f(x) dx $ $= \dfrac{1}{2} \displaystyle \int_{-2}^{0} 0 dx + \int_{0}^{2} 1 dx$ $= \dfrac{1}{2}[x]_0^2 = 1$ $k=1, 2, 3, …$ のとき $a_{k} = \dfrac{1}{2} \displaystyle \int_{-2}^{2} f(x) \cdot \cos \dfrac{k\pi}{2}x dx $ $= \dfrac{1}{2} (\displaystyle \int_{-2}^{0} 0 \cdot \cos \dfrac{k\pi}{2}x dx + \displaystyle \int_{0}^{2} 1 \cdot \cos \dfrac{k\pi}{2}x dx$ $= \dfrac{1}{2}[\dfrac{2}{k\pi} \sin \dfrac{k\pi}{2}x]_0^2 = 0$ 次に、$b_{k} (k = 1, 2, 3 \cdots)$ を考えましょう。 $b_{k} = \dfrac{1}{2} \displaystyle \int_{-2}^{2} f(x) \cdot \sin \dfrac{k\pi}{2}x dx $ $= \dfrac{1}{2} (\displaystyle \int_{-2}^{0} 0 \cdot \sin \dfrac{k\pi}{2}x dx + \displaystyle \int_{0}^{2} 1 \cdot \sin \dfrac{k\pi}{2}x dx$ $= \dfrac{1}{2}[-\dfrac{2}{k\pi} \cos \dfrac{k\pi}{2}x]_0^2 $ $= \dfrac{1-(-1)^k}{k\pi}$ これで、フーリエ係数 $a_{0} = 1, a_{k} = 0, b_{k} = \dfrac{1 - (-1)^k}{k\pi} $ が求まったので、これらをフーリエ級数展開の公式に当てはめましょう。 $f(x) = \dfrac{1}{2} + \dfrac{1}{\pi}\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty} (\dfrac{1 - (-1)^k}{k} \sin \dfrac{k\pi}{2}x)$ 今回も、Σ計算を開いた無限級数の形にしてみましょう。 $= \dfrac{1}{2} + \dfrac{2}{\pi} (\sin \dfrac{\pi}{2} + \dfrac{1}{3}\sin{3\pi}{2} + \dfrac{1}{5}\sin{5\pi}{2} + \dfrac{1}{7}\sin{7\pi}{2} + \cdots)$ さあ、これでフーリエ級数展開できました!! 今回は、皆さんでグラフを作成して確認してみてください。gnuplotのページを参考にしてくださいね。
 前章ではフーリエ級数の基礎を学びました。今度は複素フーリエ級数です。フーリエ級数展開より複素フーリエ級数の方がシンプルに表現できるんです。 $-L \lt x \leqq L$ で定義された区分的に滑らかな周期関数 $f(x)$ は、以下のように複素フーリエ級数展開できます。 \[ f(x) = \sum_{ k = 0, ±1 }^{ ± \infty } c_{k} e^{i \dfrac{k \pi}{L}x }\] また、複素フーリエ係数 $c_{k} (k = 0, ±1, ±2, \cdots )$ も以下のように定義できます。 \[ c_{k} = \dfrac{1}{2L} \displaystyle \int_{-L}^{L} f(x) \cdot \cos e^{i \dfrac{k \pi}{L}x } dx \] 複素フーリエ級数展開に慣れるために、下の問題を一緒に解いてみましょう。 次式のように定義された周期関数 $f(x)(周期2)$ を、複素フーリエ級数展開します。 \[f(x) = 1 - |x| (-1 \leqq x \lt 1) \] フーリエ級数展開 上の図を見てみると、$f(x)$ が区分的に滑らかであることが分かりますね。なので、複素フーリエ級数展開の式にあてはめられます。 \[f(x) = \begin{eqnarray}\left\{\begin{array}{l} 1 + x (-1 \lt x \leqq 0)\\ 1 - x (0 \lt x \leqq 1) \end{array}\right.\end{eqnarray}\] また、この周期関数の周期は2であることが分かるので、$L=1$ となりますので複素フーリエ級数に展開すると、 $ f(x) = c_{0} + \sum_{ k = ±1 }^{ ± \infty } c_{k} e^{i \dfrac{k \pi}{1}x } $ まずは、複素フーリエ係数 $c_{k} (k=0, ±1, ±2, \cdots)$ から求めていきましょう。 $ c_{0} = \dfrac{1}{2} \displaystyle \int_{-1}^{1} f(x) dx $ $ = \dfrac{1}{2} \lbrace \displaystyle \int_{-1}^{0} (1 + x) dx + \displaystyle \int_{0}^{1} (1 - x) dx \rbrace $ $ = \dfrac{1}{2} \lbrace \left[x + \dfrac{ 1 }{ 2 }x^2 \right]_-1^0 + \left[x - \dfrac{ 1 }{ 2 }x^2 \right]_0^1 \rbrace $ $ = \dfrac{1}{2} \lbrace -(-1+\dfrac{1}{2}) + (1- \dfrac{1}{2}) \rbrace $ $ = \dfrac{1}{2} $ これで $ c_{0} $ が求まりましたので、次に $ c_{k = ±1, ±2, \cdots} $ を求めていきましょう。 $ c_{k} = \dfrac{1}{2} \displaystyle \int_{-1}^{1} f(x) e^{-i \dfrac{k \pi}{1} x } dx $ $ = \dfrac{1}{2} \lbrace \displaystyle \int_{-1}^{0} (1+x) e^{-i k \pi x} dx + \displaystyle \int_{0}^{1} (1-x) e^{-i k \pi x} dx \rbrace $ ここで、$e^{-i k \pi x}$ にオイラーの公式を適用して、 $e^{-i k \pi x} = \cos{k \pi x} -i \sin{k \pi x}$ とします。 $ = \dfrac{1}{2} \lbrace \displaystyle \int_{-1}^{0} (1+x) (\cos{k \pi x} -i \sin{k \pi x}) dx + \displaystyle \int_{0}^{1} (1-x) (\cos{k \pi x} -i \sin{k \pi x}) dx \rbrace $ $ = \dfrac{1}{2} \lbrace \dfrac{1-(-1)^k}{k^2 \pi^2} + \dfrac{(-1)^k -1}{k^2 \pi^2} \rbrace $ $ = \dfrac{2}{2} \dfrac{1-(-1)^k}{k^2 \pi^2} $ $ = \dfrac{1-(-1)^k}{k^2 \pi^2}  (k = ±1, ±2, \cdots)$ これで、$ c_{0} $ と $ c_{k} $ が求まりました。 これらを最初の $f(x)$ の式に代入して $ f(x) = 1 - |x| $ $ = \dfrac{1}{2} + \sum_{ k = ±1 }^{ ± \infty } \dfrac{1-(-1)^k}{k^2 \pi^2} e^{ik \pi x} $ $ = \dfrac{1}{2} + \dfrac{1}{\pi^2} \sum_{ k = ±1 }^{ ± \infty } \dfrac{1-(-1)^k}{k^2} e^{ik \pi x} $ となります。
page top